
地球上で生産可能な食糧の12%、8億人分の食糧が毎年作物の病気により失われている。 これに対して、これまでは基礎から応用までをカバーする「植物病理学」の専門家が病気の原因を調べ、その予防方法を研究し、対策を講じてきた。しかし、野菜工場など超集約的な農業が産業化されつつあり、さらに家庭園芸を楽しむ人口も増加し、ヒーリングプランツ(癒しの植物)や園芸療法の重要度も増している。このため、病気の診断・治療・予防の需要が増加しており、今日「植物病院®」のニーズは大きいが、人やペットを対象にした「病院」にあたるものは植物ではまだ無い。本講座では、植物の臨床的保護技術をその研究対象とし、菌類病・細菌病・ウイルス病など植物の病気の効率的な診断・病原の同定・治療・予防のための高度先端臨床技術の開発、およびそれに基づいた臨床システムや「植物医師®」教育プログラムの開発などをその研究目的とする。一方、「植物医師®」の養成や専門家の再教育のほか、教育者の養成をその教育目的とする。これらの成果をもとに、「植物病院®」設立に向けたネットワーク構築を目指す。また、生産過程における農薬散布・肥料投与・有機栽培技術の情報と病理所見を共にカルテ化し、食のトレーサビリティシステムを充実することにより、総合的に食の安全・安心に寄与する。